◆第5回 リスク・チャンスの発見と事業化
どんな企業でも失敗は許されないと思っております。つまり、リスクを冒すということに対しては消極的なのが普通でしょう。しかし、チャンスには食欲に戦ってゆきます。ここでチャンスというのは、他社ないし外国で成功した事例を言うことが多いわけです。他社がやって成功した、外国で成功している、だからチャンスだと。そう考える。すでに昔、あるいは今どこかの会社で成功している、それがチャンスだと。他社ないし外国等どこもやっていないような新製品、新規事業は逆に危ない。リスクが大きいと考える。
ここで冷静に考えてみたいのですが、最初に事業を始めたアート引っ越しセンターやマクドナルドは当時その前例があったのでしょうか。アート引っ越しセンターは単身赴任の増加という社会的背景にヒントを得て、初めて事業を起こして成功したわけです。マクドナルドやセキュリティの機械警備業はいずれもアメリカにそのお手本があったわけですが、それでも日本的に翻訳して成功した事例です。いずれも当時の日本には存在しなかった。それをいち早く真似して 日本で成功した。それでもアメリカに先輩がいたから、上手く真似できたのです。それを真似した人も偉いと思います。もし、両者ともアメリカになかったら、と考えたことがありますか。日本人の発想で考えつくアイディアでしょうか。つまり、日本企業でベンチャーと言われた企業でも、誰かが考えたチャンスをヒントに起業していたわけです。決して、自らリスクを発見し、それをチャンスに変えたということではありません。
ビジネスは、どこかにチャンスを見つけて事業化をするのではなくて、社会にどんなリスクがあるか、そしてそのリスクに対応するビジネスは存在しているか。もし、存在していなければまさしくチャンスなのです。ところが、市場がないからリスクがあるという。市場ができていればチャンスという。これでは、新しい起業はできません。以前の日本における第3次ベンチャーブームもチャンス思考ですから成功例は非常に少ないわけであります。南海の島に行ったら皆靴を履いていなかった、だから靴は売れないと判断する。そんな中小企業の経営者が多いと、なかなか現在の不況から脱出できません。
この考え方は日本人独特のものであります。どこでもやっていないから起業したり、新製品を開発するのが成功への道。そのためにはチャンスを発見するのではなく、リスクを発見することであります。リスクをチャンスに変換することがベンチャー事業であります。それは、製品のみならず人材、財務、管理、マーケッティングにかかわるチャンスではなくリスクを発見し、それをチャンスにつながるように創造を重ねるわけであります。ところが、リスクと聞いただけで、全く聞く耳を持たない経営者がいることは、大変残念なことであります。とにかく耳当たりの良いことしか聞かない。つまり、ノーリスクマネジメントが最高のマネジメントであると誤解しているわけです。このような日本人の資質を変えるには未来質管理の教育しかありません。生き残るためにリスクを発見しましょう。
