第1回

新製品開発成功講座
◆第1回未来質への挑戦
 不況が続くと開発担当者は、どこの会社でも消極的になってしまいます。しかし、不況の時こそ競争相手も何を作ったらよいか困っています。むしろ不況は開発者にとっては絶好のチャンスになります。このチャンスをものにするには、現在市場にある商品・製品、事業システムなどのリスク(不便、不都合、疑問)を洗い出し、チャンスに変換することが重要な意味をもってきます。もちろん、未来のあるべき製品を創造し、それに合った開発姿勢も同じように重要です。リスクとチャンスを複眼的にチェックすることが不況期における新商品・新事業開発のポイントです。リスクの裏にはチャンスあり、チャンスの裏にはリスクあり、です。現在市場で目にする商品の多くは過去の質をもったものであり、その過去質の影としてリスクが目に見えない形で忍び寄っております。
 例えば、目覚まし時計には、一人が早朝に起床する時間に目覚まし機能を合わせておくと隣で寝ている人までも強制的に起こしてしまう、というリスクが発生しております。
 そこで、2つの時間帯に分けて目覚まし機能を発揮させる新しいタイプの時計が必要になります。あるいは、朝5時に起きる人だけを必ず起こしてくれる目覚まし時計があれば最高でしょう。未来質の中身は、リスクであり、そのリスクを分析するとニーズやウオンツにつながるということであります。
 商品・製品のリスク、システムのリスク、情報のリスク、金のリスク、人のリスクを徹底的に洗い出し、それをチャンスに変換することが日本企業の開発現場の方々に必要とされております。将来が見えないということは、現在のリスクが見えないということと同じことであります。リスクは、目に見えにくく、そして顕在化していても誰も気がつかない場合があります。奥深くもぐりこんでしまえばさらにリスクを発見できません。そして、リスクが目に見えるようになった時には、すでに競争に破れていることを意味します。
 未来は予測するものではなく、未来は創造するものであります。自分で未来を創っていくことがこれからの新しい21世紀における基本的姿勢となります。それには、従来の習慣、知識、規則を客観的に見て、どこにリスクがあるかを冷静に分析することが重要であります。学生時代の知識は、とっくに役立たなくなっております。常に、世の中を変化の連続と見ること、そしてその変化を先取りする姿勢が求められております。そのためにも是非、未来質に挑戦し、その姿を浮き彫りにすることであります。いつも同じ考え方、いつも上司の言いなり、いつも親会社の言いなりでは、明日の産業は育ちません。
 未来質を追いかけ、未来質を実現させることが不況脱出のカナメであります。企業の未来質、組織の未来質、事業の未来質を大いに考えようではありませんか。

注)未来質/現在や将来のリスクを発見、予知し、それを解消することで将来の確かな製品・サービスを発見するノウハウ

第2回

◆第2回 過去質・現在質・未来質
モノの質は、過去、現在、未来という時間の流れの中でとらえたほうが分かりやすいことが
あります。つまり、今我々の目の前に置かれている製品の数々、サービスの数々、システ
ムの数々は今という時点よりも昔に誰かが考えた質であります。例えば、冷蔵庫、テレビ、
掃除機、カメラなどの日用品、糖尿病患者のめの料理宅配便、コンピュータシステムなどは今我々の目の前に存在しております。
 それは、どこかの企業の開発者が今より前の過去という時点に創造した新製品であった
わけです。もちろん冷蔵庫やテレビなどには、いろいろなタイプの製品が存在しております。また、開発者は、毎年製品を差別化しておりますから、毎年、冷蔵庫の新製品が市場に出されております(冷凍室の大きい冷蔵庫など)。
 つまり、現在市場に存在する製品は過去に誰かがその時の新しい考えのもとに差別化さ
れて誕生した過去の製品であるわけです。今、目の前で見ている製品群、サービス群、システム群は全て過去のコンセプトで出来上がった過去の製品であるわけです。現在目にする過去の製品群などは少なくとも現在時点では過去の産物であります。それでは、現在の質とは何でしようか。それは、過去の製品群の裏に目にみえない影として存在するリスク
(不便、不都合、不満、不快、不審などの総称)として考えられます。
 そのリスクを過去の製品群から排除ないし解消することによって将来の品質が具体的に
目にみえてくるわけであります。過去の製品群の裏に影としてまつわるリスクを解消した
もの、それが未来質であります。つまり、過去の製品群のリスクを360度の視点から発見
し、それがユーザーのニーズに合ったものがヒットするわけであります。大きなリスクほ
どヒットにつながるチャンスも大きくなります。ポストイットもチョイソルも皆大きなリスクをかかえておりました。ポストイットは、従来の付箋は、一度貼ると剥がれず、剥がしても下地を汚すという面倒くささというリスクを持っていました。それがポストイットであれば簡単に貼って、簡単に剥がす、しかも下地が汚れないというメリットがありました。また、チョイソルという500円シェーバーは、従来の重たい、携帯できない、大きいというリスクを解消し、携帯していれば、何時でも、どこでも剃れるという便利さを実現しました。それは、製品群が過去に持つリスクという現在質を解消して誕生してきたものであります。
 つまり、ヒット商品を作りたい人は、過去の製品群の中に現環境の中でどんなリスクがあるかを体系的、科学的に発見するための手法を持つことであります。また、過去質の製品群が未来の環境の中でどのような使われ方をするかを追求しながらリスクを発見する方法もあります。
 これは、シルバー商品群、環境製品群、セキュリティ製品群などの場合には、将来の社
会構造、意識構造を創造的に開発し、それに対応するための新製品づくりが要求されます。
 何がリスクか、何がチャンスか、を見極めるリスク眼を持ちましょう

第3回

◆第3回リスクとチャンス
前回に、ヒット商品を作るには、リスクとチャンスの両方を見極める眼を持つべきであると言いました。それでは、リスクとは何でしょうか。そしてチャンスとは。最近、新聞紙上でもリスクという言葉が氾濫してきております。
 リスクとは、危険や冒険を意味します。新商品や新事業の危険は何か。そして冒険とは。危険は身体だけでなく、物や金、システムにもふりかかってきます。我々の生活は、リスクでおおわれ、身体への損害、物や金、システムへの損害があふれております。
 そこで、新商品や新事業では、その危険の意味は、さらに拡大解釈され、不満、不快、不都合、不利、不合理、と言った言葉に置き換えられ、さらに損失、不確実性、阻害要因、マイナス要因、前兆現象、欠陥なども含んできます。特に、商品や製品におけるリスクとは、売れないマイナス現象を言います。さて、商品や事業にはどんなリスクがあるのでしょうか。健康医療分野では、例えば、リモコンのボタンが小さいというリスクのために高齢者や障害者にとって非常に不満が出てくる。それを操作しやすい、そして適度な大きさに差別化をする。それがチャンスへとつながっていきます。
 チャンスとは、機会、好機、見込み、偶然、運など成果につながるプラスの現象を意味します。リスクという売れない前兆にコストをかけて、チャンスという売れる前兆に変えてゆく。それが未来質管理の本質であります。過去の成功商品は、全てリスクをチャンスに変換したものばかりです。そのリスクは、時代と共に、意識と共に、環境と共に変化します。その変化の先取りをしながら新商品・新事業を開発するのです。
 高齢化社会には、お年寄りが一人で留守番する機会が増えます。そこで、従来の座椅子をハイテク化し、書留郵便、お届け物、御用聞き、隣人の訪問などに座椅子に坐りながら対応するハイテク座椅子が必要になります。
 そこでは、お年寄りの留守番の時に起こるいろいろな不都合(二度手間、早期対応ができない、怪我をする等)というリスクを解消し、ハイテク座椅子の販売というチャンスにつながることになります。子供が減少するという社会的リスクに対応して、どんなチャンスが発見できるか。それは、大量生産の塾経営ではなく、一人一人の個性を見ながら教育する、というチャンスが生まれます。そのためには、子供に応じたテキスト内容、教え方をサービスとして提供すれば、これからの型経営は成功します。
 リスクをつかまえれば、チャンスをつかまえたのと同じこと。そして、チャンスの裏には必ずリスクが隠れています。リスクはチャンスであり、チャンスはリスクであります。リスクとチャンスの両面から管理することが未来質管理の本質であります。野球でもピンチの後にチャンスあり、チャンスの後にピンチあり、と言われます。リスクとチャンスとは、常に表裏一体の関係にあることに留意して下さい。
 従いまして、リスクを見つけた時には、どんなチャンスにつなげるか。そしてチャンスをつかんだら油断せずにリスクを考え、事前におさえることであります。

第4回

◆第4回未来質管理の体系
 未来質の理論を理解するための最後の回としたいと思います。次回からは実際のテーマにもとづいて開発法を述べてゆきます。
 未来質管理の理論体系は、発見-予知-変換の3つのフレームが基本となります。このフレームは、新商品開発、新規事業開発はもちろんのこと、経営戦略、事業戦略、組織戦略、財務戦略、マーケッティング戦略など、経営全般の戦略や管理にもあてはまるものであります。ここでは、特に、新商品・新事業に関する発見-予知-変換について述べてみましょう。
 ベンチャー起業やニュービジネス開発の論議が依然として盛んでありますが、そこでは、市場解析、雇用問題、財務問題、法律問題ばかりを論じており、肝心の事業の柱となるべき新製品・新事業をどのような方法で発見するか、ということに関してはきわめてお粗末であります。どんなベンチャービジネススクールに通っても、それでは起業はできません。
 問題は、将来の事業の柱となるべき新製品や新事業は何か、ということであります。まず、その発見をすることが第一であります。その意味で、発見というのは、それなりの手法がないと出来ません。ブレーンストーミングをやってただアイディアを「出せ出せ」といっても30分もすれば空回り、行き止まりにぶつかることは皆さんも経験されていると思います。ビジネスや新製品の発見には素人の精神で素直に疑問を持つことからはじまります。
 専門家は、その分野には精通していますから、あまり新鮮な疑問が出てきません。その発見の手法には20種類以上もあります。そしてその新製品や新事業が発展するかどうかのリスクの予知-予防-対処-復旧に関する評価が必要になります。ここでは、管理者、戦略策定者としての感性と分析能力が必要になります。このステップでは、新商品や新事業に関する市場、雇用、組織、法律などの問題も当然評価分析されます。そして、最後は、変換であります。これは、リスクやチャンスを事業機会に変換し、利益を積極的に獲得するためのノウハウの開発をします。当然のことながら企業家精神が要求されます。
 未来質管理では、新商品・新事業を発見するためのヤング集団、新商品・新事業のリスクやチャンスを評価・分析できる頭脳をもったクール集団、そして誕生した新商品・新事業を具体的に展開できる勇気と感性を持ち、同時に技術的センスのある専門起業家集団が必要になります。
 未来質管理は、過去の経営管理のヨコ軸としての計画-組織化-調整-統制やプランードウーチェックーアクション(PDCA)に、タテ軸としての発見-予知-予防-対処-復旧という戦略的なフレームを当てはめマトリックスで経営管理を革新するものであります。
 つまり、過去の経営管理が役に立たなくなった原因は、タテ軸としての発見-予知-予防
-対処-復旧及び変換が存在しなかったからであります。新商品・新事業を開発するには、まずリスク・チャンスの発見-予知-変換の3つのフレームにそって考えてゆくことが有効であります。次回からは、このフレームにそってお話を進めてみましょう。

第5回

◆第5回 リスク・チャンスの発見と事業化
 どんな企業でも失敗は許されないと思っております。つまり、リスクを冒すということに対しては消極的なのが普通でしょう。しかし、チャンスには食欲に戦ってゆきます。ここでチャンスというのは、他社ないし外国で成功した事例を言うことが多いわけです。他社がやって成功した、外国で成功している、だからチャンスだと。そう考える。すでに昔、あるいは今どこかの会社で成功している、それがチャンスだと。他社ないし外国等どこもやっていないような新製品、新規事業は逆に危ない。リスクが大きいと考える。
 ここで冷静に考えてみたいのですが、最初に事業を始めたアート引っ越しセンターやマクドナルドは当時その前例があったのでしょうか。アート引っ越しセンターは単身赴任の増加という社会的背景にヒントを得て、初めて事業を起こして成功したわけです。マクドナルドやセキュリティの機械警備業はいずれもアメリカにそのお手本があったわけですが、それでも日本的に翻訳して成功した事例です。いずれも当時の日本には存在しなかった。それをいち早く真似して 日本で成功した。それでもアメリカに先輩がいたから、上手く真似できたのです。それを真似した人も偉いと思います。もし、両者ともアメリカになかったら、と考えたことがありますか。日本人の発想で考えつくアイディアでしょうか。つまり、日本企業でベンチャーと言われた企業でも、誰かが考えたチャンスをヒントに起業していたわけです。決して、自らリスクを発見し、それをチャンスに変えたということではありません。
 ビジネスは、どこかにチャンスを見つけて事業化をするのではなくて、社会にどんなリスクがあるか、そしてそのリスクに対応するビジネスは存在しているか。もし、存在していなければまさしくチャンスなのです。ところが、市場がないからリスクがあるという。市場ができていればチャンスという。これでは、新しい起業はできません。以前の日本における第3次ベンチャーブームもチャンス思考ですから成功例は非常に少ないわけであります。南海の島に行ったら皆靴を履いていなかった、だから靴は売れないと判断する。そんな中小企業の経営者が多いと、なかなか現在の不況から脱出できません。
 この考え方は日本人独特のものであります。どこでもやっていないから起業したり、新製品を開発するのが成功への道。そのためにはチャンスを発見するのではなく、リスクを発見することであります。リスクをチャンスに変換することがベンチャー事業であります。それは、製品のみならず人材、財務、管理、マーケッティングにかかわるチャンスではなくリスクを発見し、それをチャンスにつながるように創造を重ねるわけであります。ところが、リスクと聞いただけで、全く聞く耳を持たない経営者がいることは、大変残念なことであります。とにかく耳当たりの良いことしか聞かない。つまり、ノーリスクマネジメントが最高のマネジメントであると誤解しているわけです。このような日本人の資質を変えるには未来質管理の教育しかありません。生き残るためにリスクを発見しましょう。

第6回

◆第6回 リスクの予知・予防と事業化


リスクの発見をした後に、その予知・予防を考える。それが、未来質管理の基本であります。例えば、高齢化社会のリスクとして、シルバーの介護問題がにわかに登場します。そこで介護に伴うどんなリスクが予知できるか、そして予防できるか。介護には、ベッドでの生活に伴ういろいろなリスクが予知できます。
例えば、トイレに関するリスク予知、着替えに関するリスク予知、入浴に関するリスク予知、留守番に関するリスク予知などいろいろなリスク予知項目があります。寝たきりのベッドの上で着替えるということは、腕が回らない、身体が動かない、着せ替えができない、というリスクがどんな時、どんな人に、どの程度のリスクとなってあらわれるかを予知します。つまり、予知とは発見されたリスクに対して、何時、どこで、どんな状況の時に、そしてどんな規模でということを予め前兆を知ることであります。腕が回らないというリスクは、腕の運動不足が原因で回らないケースがあったり、ベッド自身の機能的面での不具合が原因であることがあります。そこで、腕が回るように、ベッド上でも腕を動かす運動が日頃自然にできるようなベッドを開発することで、腕が回らないというリスクを予防できることになります。
つまり、リスクを発見し、リスクの予知をしたら、その予防策として新製品を開発することになります。入浴の時には、衣服を脱ぐわけですが、その時にどんなリスクを予知できるか。複数の人の手助けを得て脱がなくても、自分で衣服を脱げる、そんな機能をもったベッドが必要になります。そして、介護浴槽も従来の浴槽タイプではなく、寝袋タイプの浴槽が開発されつつありますから、非常に便利になってきます。つまり、入浴に伴うリスクがあまりにも多くあり、そのリスクの予知は、着せ替え、入浴手助け、などに多くのリスク予知ができます。また、介護ベッドに一人で留守番している時の郵便書留、御用聞き、お届け物への対応などもできるようなベッドの開発が求められております。
リスクの発見の後にどんな予知ができるか、そしてどんな方法で予防するかを開発のレベルで考えるわけであります。シルバーの緊急通報システムも、どんな緊急事態があるか、つまりリスクの発見であります。転んだ時、意識がなくなった時、入浴中に気分が悪くなった時、運転中に急に気分が悪くなった時などシルバーの緊急事態はこれからますます多くなります。そんな緊急事態にどのようなハード・ソフトで対応するか。ペンダント型の通信方式で救急センターに通報する方法もあります。しかし、意識があるうちはよいのですが、意識がなくなる瞬間に通報できるハードは現在ありません。トイレで大便の時に息んだために脳溢血で倒れる事故が多発しております。特に一人者、あるいは一人で留守をしている時にこんな事態に遇ったらどうすのでしょうか。少しでも早く発見できれば助かるかもしれません。今のシルバーのセキュリティサービスには本格的な新製品はありません。
だからチャンスなのであります。これから2025年に向けてシルバーセキュリティは事業のチャンスです。

第7回

◆第7回 ビジネス支援分野の新規開発
 今回より、具体的な有望分野の新商品、新製品、新規事業の開発法について述べてゆきます。ビジネス支援、国際化支援、情報通信支援、環境支援、生活文化支援、医療・福祉支援、健康支援の順番で述べてみましょう。
今回はまずビジネス支援分野のチャンスを探ります。ビジネス支援とは、企業の事業活動のお手伝いを意味します。例えば、ベンチャーキャピタル、トランクルーム、シンクタンク、セキュリティサービスなどです。ここではセキュリティサービスが最近注目を浴びておりますので取り上げてみましょう。
 セキュリティは安全・防災関係で使われる言葉で、警備保障会社、テロ・誘拐プロテクト会社などで火災、地震、侵入、環境保全、コンピュータ保全などを対象にした広範囲に使われます。つまり、危険から身を譲る分野であります。かって、現金強奪事件が多発したことがありました。これも警備会社の裏をかかれて現金を盗まれてしまうわけです。迷宮入りの事件もかなり多い。特に、宝石、貴重品、現金、証券などを扱う企業、スーパーなど現金商売の企業は狙われます。そこで、人的セキュリティや機械警備体制をもつわけです。しかし、セキュリティのハード・ソフトが100%効果を発揮し、リスクをゼロにできるというわけではありません。私は、ハーフセキュリティ、と言って半分はハードで対応し、半分はソフトで対応する。ソフトは、訓練された人間がリスク対応をする、それが一番効果的であります。セキュリティはもちろんリスクを制御するために必要とされるわけですが、セキュリティが十分でないと逆にリスクを呼び起こすことがある。その辺がセキュリティの難しいところです。しかし、このセキュリティ分野は、これからの21世紀にはますます繁盛することが予測されます。やはり、人間はたとえそれが100%リスクを制御してくれないと思っても、少しでも安心したい、という意識があるからセキュリティを求めます。特に企業の場合には、セキュリティ機器がないと、事故、事件の時に経営者の責任が問われます。例え事故、事件に遇っても、セキュリティシステムが導入されていれば、社会的には許さる。それを社会的抗弁力といいます。とにかく目に見えないリスクを取り扱って成功しているのは、セキュリティ産業の特徴であります。
 本来、セキュリティは公共財といって、消防、警察、自衛隊、公園などだれでも何時でも無料で利用できる、という資産です。しかし、安全も水も無料では購入できない時代になってきております。そこで、今後のセキュリティの新規事業は、従来の警備保障会社のようなサービスではなく、地域密着型、緊急時のシステム対応型、地震時の交通渋滞整理型、など新しい対応ができる、そんなセキュリティになるでしょう。特に地震時にセキュリティが殆ど役に立たないというのがこれから将来の課題になります。1995年の阪神淡路大地震の時に現地視察に入った時に、家庭の警備機器類は倒壊建物の中でなんの役にも立たないという悲劇がおきていました。今、必要なのは非常時のパニック時に役立つセキュリティなのです。

第8回

◆第8回国際交流関連分野

 毎年海外旅行者の数が増え、今やこの不況でも1500万人に近い人達が海外に毎年飛び立つ時代になりました。また、海外から日本への旅行者も増えてきております。国際社会とは、まさしく世界各国の人達が自由に地球を動き回る時代と言えます。
 このような背景のもとに国際交流をテーマにしたビジネスが盛んになってきております。
国際会議の場所提供サービス、海外に出掛ける人達向けの研修事業、翻訳サービス、個人輸入代行業、外国人生活支援事業、海外生活相談事業、海外引っ越し業、インターネットを使った各種サービス業などいろいろなビジネスが登場します。もちろん語学専門学校もNOVAなど特徴を出した教育事業もあります。国際的に見ると、日本人の語学(特に英語)コンプレックスには著しいものがあります。最近の若い人は大分英語圏での生活に慣れてきて自由に話しておりますが、日本人全体ではまだ英語を母国語のように流暢に話せる人は稀であります。国際化と言っても英会話が苦手ではビジネスが盛り上がりません。
 ここでは、ユニークな英語教育事業を開発してみましょう。今成功している英会話塾は、駅前、個人指導、親切なテキスト、徹底的訓練、チケット制、時間制、ネイティブによる指導などの成功要因を持っております。英会話での日本人の一番のリスクは、「話せても聞けず」、つまり聴き取り能力に問題があります。私の友人のアメリカ人、エドは「話さないから聞けない」と言っています。たしかに日本人は、聞けないから話せないのではなく、話さないから聞けないのが正しいと思います。
そこで、ユニークな英語教育として、1週間24時間アメリカ人と生活し、日常生活からビ
ジネスまでの英会話を訓練するようなセミナー、毎朝電話でネイティブが英語を使って起こしてくれるテレホンサービス、毎日決まった時間に携帯電話に英語の電話を入れてくれて1分間レッスンをしてきれるサービス、英会話専門のTV番組、テレビ字幕に英文を入れてくれるサービス、1日英会話を話しながらの外国人デートサービス、英会話による会議サービス、などいろいろとアイディアがあります。とにかく話す機会を多くすることが英語上達の秘訣であります。東南アジアの方がほとんど英語を話せるというのは英語にふれる機会が多いということであります。日常生活の中で英語が入ってこないと、英会話学校だけの英語となり、役に立ちません。
 英語が自由になれば、個人輸入代行業をやる時にはどんどん自ら外国に出掛けて、商品の実物を目で見て判断できます。外国人と共同してベンチャービジネスも起業できます。今、日本でベンチャー起業というとほとんどが日本人だけが集まってビジネスを進めるというのが実態であります。日本人、アメリカ人、中国人、インド人がミックスされてベンチャー事業をやれば非常に強いビジネスが誕生します。国際交流事業は、まず世界の人々が一つの事業に参加することが成功の条件になります。日本の野球が強くなってきたのは、外人選手がいるからであります。他のスポーツでも外国人と共にやっているスポーツ分野は強くなっております。国際化推進ビジネスの基本は、外国人と一緒に働くことです。

第9回

◆第9回情報通信関連分野
 情報通信分野でのベンチャー企業は最近かなり多く誕生している。例えば、インターネット接続サービス、インターネットで不動産の売買・賃貸・リフォーム情報を発進するサービス、通信カラオケシステム向け画像配信サービスなど教えきれない。しかし、情報サービス業を手掛けてきたハイパーネットが自己破産している。ハイパーネットのサービスは、広告サービスをインターネットの画面を利用して広告を打つ手法である。つまり、広告閲覧会員になると自分のパソコンをインターネットに接続する料金が無料になるが、パソコンの隅に広告が流れる。ハイパーネットは企業から広告費を徴収することで会員の接続料金を無料にするというシステムである。96年度にはニュービジネス協議会の「ニュービジネス大賞」を受賞している。そんな有望なビジネスもビジネスの品質管理そのものの不備、コンビュ-ターシステムの事故など不幸が重なり、その上若き社長の経営判断の未熟さが会社を倒産させた。ここでの教訓はどんなに素晴らしいベンチャービジネスでもその戦略、経営管理、社長哲学がしっかりしていないとつぶれるということであります。もちろんその逆もたくさんあります。在宅医療・福祉サービス、遠隔地教育、ホームショッピング、データベースなどもそれらのビジネスをどのように情報通信と組み合わせて魅力を出すかが問われている。
 日本のアニメやゲームソフトが最近世界的に評価されるようになってきている。つまり、コンテンツビジネスも有望なビジネス分野として注目されはじめてきた。コンテンツは、メディアを介して提供される映像や音楽、文章など情報の中身を言います。従来はコンテンツがメディアビジネスと一体化していた。そのためにテレビ局が番組の制作から放送まで行うために視聴者の好きな番組が選択できない、という欠点があった。これからのコンテンツには囲碁、将棋、外国人向け外国語放送など特殊で細分化された番組が入ってくる。
 これからのビジネスは、インターネットやコンピュータを使い、きめ細かいサービスの提供が可能となる。場合によっては営業活動、開発活動、広報活動などは全てインターネットでできることにもなる。SOH0(スモール・オフィス、ホーム・オフィス)という新しい市場も成熟してきている。ここでは、インターネットを利用して、特殊技能をもった人を会員に登録させて、他方では企業で必要とするニーズを登録させて両者をマッチングさせて商売をするということも行われている。
つまり、SOHOの社長が仲介をして商談が成立したら両者から手数料を徴収するという簡単なビジネスである。インターネットを使って花嫁・花婿のお見合いをさせ、縁談が成立したら手数料を戴く。骨董品の仲介、遊び仲間の仲介、レストランや飲食店の広告、特定グループの運営サービス、教育の添削指導、など今までのサービスは全てインターネットを仲介して置き換えることが可能となった。企業経営者もいつまでも今までのような固定観念のままでいると従業員が突然消える時代になっていることを自覚するべきである。

第10回

◆第10回健康・医療分野
 日本における65歳以上の全人口に占める割合は、2020年には25.5%になるという予測が出されている。各企業は今から高齢化社会に売れるシルバー商品の開発に躍起となっている。シルバービジネスはかっては100兆円ビジネスと騒がれた時期もあったが、その時は失敗に終わっている。つまり、まだ、「自分はシルバーではない」という意識がデパートでのシルバーコーナーへの抵抗感となってあらわれていた。そのためシルバー商品は殆ど売れないで終わった。人間はいつまでも若く、そして長生きしたいという願望を持っている。年寄り扱いに対する嫌悪感をどの程度減らせるかがポイントなる。
 しかし、2000年に向けて現実感として高齢化社会には、高齢者介護、医療、健康事業がますます元気になることがはっきりしてきた。これからの健康・医療事業には、常に明るさ、希望、安らぎ、楽しみ、安心、安全がキーワードになる。明るいイメージで医療機器、病院環境、介護、健康機器をまとめてゆくところに大きなチャンスが生まれる。決して暗いイメージを持ってはならない。シルバー専門のバー・クラブ、シルバー向けストレッチ体操、健康維持のために大声発生訓練機、免疫力向上のための大笑い健康機、シルバー・ヤング交際パーティー(援助交際ではない)、健康食レストラン、生前葬儀シミュレーション、シルバー用健康ホテル、60歳以上の人が経営するソフト会社、などいろいろなシルバー事業が考えられる。
 また、病院へ行く前に自分で健康度合いをチェックできる機器などがこれから流行る。例えば、血圧計、体温計、血糖値測定器、など病院へ行かなければ判断できないことが、自分で測定できようになった。予防医学の分野の製品はますますこれから発展するであろう。いまや浄水器、空気清浄器、ランニング機械、マッサージ機などもどんどん家庭に入りこんできている。シルバー産業が100兆円産業に育った時には、日本経済は再び成長軌道に乗ることは間違いがない。
 ただ、今は将来の心配に備えて貯蓄性向を高めているが、いずれ「お金はあの世に持って死ねない」という意識が普遍化すると、人間は明日の健康のために自分の貯蓄を消費に向けることに間違いない。ただ、現在のように将来的にデフレ不安、政治不安、教育不安など不安だらけの社会ではなかなか意識変換も難しい。そこで、新しい人間観、新しい日本人の意識を教育によって時間をかけて醸成することである。結局、消費性向は、われわれ人間の意識との相関関係にあるから、将来への明るい希望、明るい見通しを持つことが望まれる。そのためには教育が全ての鍵を握っていることになる。
 戦後、日本は戦争を放棄し、経済活動に専念した結果、世界で第2位の経済大国まで成
長した。しかし、相次ぐ不祥事、不正支出、など本来の経済の実力ではなく、裏の手を使って企業経営を動かしてきた結果、市場が日本の経営者に見切りをつけたわけである。そこで、われわれは、再び原点に戻って、正しい競争原理のもとに企業競争をすることが今の日本経済を正規の道に戻す道筋となる。健康医療事業の発展もこのような姿勢のもとに展開されるべきであろう。

第11回

◆第11回教育事業分野

今、日本経済を再び活性化させるには、戦後の教育制度を変えることが必要である。知識の詰め込み教育が先行し、知恵や知性の教育の遅れが今の経済不況につながっている。「良い大学へ行けば、良い会社に就職でき、良い生活ができる」という方程式が社会に定着してしまったために、人を判断する基準は学歴や会社名であり、その人の知恵や創造性は評価されない。ここに経済が不況になった最大の原因がある。
 今の日本の大学生は 8割以上が大手企業志向であり、自ら危険を冒してベンチャー事業をやろうとする学生はいない。これに対して、米国の学生は 7割はベンチャー起業をのぞみ、大手企業への志望者は少ない。米国の学校教育では、小学生の頃からビジネスを教えるが、日本では御法度となる。「金儲けは悪」というのが日本の社会風土では根強い。これでは、ベンチャー企業はなかなか誕生しない。今や、受験産業に代わって、新しい創造性教育の教育事業の誕生が待たれる。わが国で教育・研修と言えば、OA機器教育、パソコン教室、管理者養成講座、資格試験、などほとんど創造性を教育する機関はない。
 これからの日本の社会は学歴や会社名ではなく、確実にある専門分野の知識、事業を立ち上げる知恵、グローバルに事業を進める推進力が必要とされる。有名大学を出たことが、必ずしも創造性につながるわけではないことを認識するべきである。それは、現在の教育をみれば高校でも大学でも徹底的な詰め込み教育で優の数を多く取った学生が社会で評価される。それは全て間違いではないが、半分間違っている。半分は、整理整頓、体系的整理のできる人が必要であり、半分は発想豊かに、創造し、知恵を使って企業の新しい製品開発や新規事業ができる人が必要になる。現在の不況下では、後者のタイプの人間が必要とされる。ゼロから物を生み出せる、そんな人材が必要である。そのためには、リスクマネジメントや未来質管理の教育がどうしても欠かせない。リスクは創造そのものである。
リスク感性の高い人が創造性の高い仕事をする。大学の授業科目の中にも、リスクマネジメントや未来質管理がないと、21世紀は欧米諸国には到底かなわない。品質管理も重要であるが、それを支えているのが、未来質管理であることをわすれるべきではない。
 われわれが何時までも子供に有名大学、有名企業がベストであることを教え続けていたら、日本は間違いなく沈没する。有名大学、有名企業は出来上がった過去の完成品である。これからの新しい時代には新しい大学、新しい企業が当然誕生しなければ社会の進化はない。将来の本田技研、ソニー、パンソニック、トヨタが必要になる。それには、現在の偏差値重視の教育制度の破壊、知識詰め込み主義の破壊が必要になる。何故、学生が夢を持ち、日本の将来を考えなくなったか。その理由は、なんの特徴もなく、自分で考えることもなく、ただ知識を頭の中に詰め込むことの退屈さからである。だからやたらと知識を覚えることのテクニシャンが有名大学に入り、有名企業に行く。その結果、創造性のない管理が出現し、不況へと進む。それが現在の日本の若者がやる気をなくす原因となっている。
 新製品開発には高学歴、有名企業は関係ない。それより、意欲、手法、知恵の3つが大切である。

第12回(最終回)

◆ 最終回
21世紀の開発手法
未来質管理

未来質管理という言葉は、今から20年前に小生が創ったものであります(商標権登録済)。当時、リスクマネジメントを使った新製品開発・新規事業開発を進めていたところ、リスクマネジメントは、地震、テロ・誘拐などに使われる場合が多く、開発には適切でないと思い、2年以上もかけて未来質管理という言葉を創ったわけであります。それは、未来という発想から、未来の質を管理する、まとめて未来質管理と命名したわけであります。銀行の方には未来質というとミライシチか、よく聞かれます。質とは価値を持ったものであり、質屋の質も価値をもったものであり、シチでもかまいませんが、ここではシツと読みます。現在、日本企業のトップテンを除いては、新製品開発の手法といっても体系的なものを持っておりません。特に企画部などでは、ほとんど体系的な企画手法がありません。あったとしても、過去のどこにでも存在する手法の集大成で終わっております。そこには、リスクとか危機という観点から製品開発をながめるということは絶対にありません。
 特に大手企業の現場では、現在作っている製品づくりに追われているから新製品開発をする場合のアイディアは大変乏しいと言わざるをえません。特に技術に至っては、できる技術しかやらない、というのが大半であります。開発はできないからやるのであって、できないからやらない、というのは技術開発の手法がないからであります。何故そのような考え方になってしまうかというと、日本企業の今までの技術開発は欧米に存在している既存技術の物真似をしてきましたから、手本がないとその先できない、ということになるのです。つまり、新しいアイディアを製品化する場合、過去にそれに関する技術があればできる、なければできない、という発想になります。新製品開発はできないからやるのであって、できるからやる、のではないということを明確に認識するべきでしょう。
 この点を日本の企業は「技術的にできないから推進する」という姿勢に変えないと欧米企業にこれからは負けてしまいます。そのために未来質管理を勉強し、研究することが必要なのであります。未来質管理は、一つの機能を達成するのに多くの技術の方式を発見し、一番効率的、創造的、コスト安、の方法を選択するのであります。例えば、カーテンを自動的にリモコンで動かしたいという場合には、リニアモーター方式、ワイヤー方式、スクリュウ方式、その他の自動方式を発見する方法が未来質管理であります。どんなアイディアにもそれを実現するための技術があります。その技術にも複数の技術があります。その複数の技術を発見しないで、目先のたった一つの技術で対応すると、レベルの低い技術で対応することになり、出来上がった新製品にも感動がありません。未来質管理には一つのテーマについて無限のアイディアを発見するための方法がたくさんあります。
 これからの21世紀に向けて、単発的なアイディアは勝負にならず多発的なアイディアの選択の時代になることを認識するべきです。それが未来質管理の一つの強みでもあります。
 本講座を熟読し、さらにご質問があれば「お問い合わせ欄」から自由にお尋ねください。
最後に皆さんのご健闘を祈念しております。
(この講座はすべて株式会社未来質中央研究所に©所有権があります。)